2017.06.17 Sat
うそ
ゴーストライターたち
まずは、こちらをお読みください〜。
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1、
(1)
洗脳を解く「洗脳解除アドバイザー」
世の中、うっかりしていると洗脳されてしまいそうな事柄があふれている。片付けこそステキな人生とうたう「断捨離」しかり、部下を上手にコントロールする「できる上司」神話に、保育園に入れるためには妊娠時期からコントロールする「保活」、コラーゲンでアンチエイジングなど、さまざまな縛りや提案は、言ってみれば洗脳である。
私って流されやすいし、いろんな本を読んだりセミナーに参加して実践してみるけどどうもうまくいかなくてモヤモヤ……。そんな人をいろんな縛りから解放させるのが「洗脳解除アドバイザー」の仕事。たまたま、フロムAで募集しているのを見つけてバイトに応募したのがきっかけ。
仕事内容は、「あなたのその生き方、考えは洗脳されてるんですよ。自分の考えで行動していいんですよ」と気づかる。そして洗脳を解いていく。仕上げは、「いやいや、もっと自由に好きにしていいんですよ」と、アドバイス。そう、洗脳解除アドバイザーの仕事は、洗脳を解いてこちら側の考えに洗脳しちゃうこと。
しかし、これで終わったらバイトは成立しない。そこで、次に行うのが不安を煽ること。「そんなに自由にしていて大丈夫? 太っちゃうよ~、シミが目立ってなんか老けて見えるけど~。え? 老後はそれで大丈夫? 部下がついてきてないんじゃない?」 などと不安を煽って、不安を解消しないといけないんじゃないかという洗脳をする。洗脳したら、また「いや、大丈夫!」といって洗脳解除。そうしたらまた「え? 大丈夫なの?」と不安を煽って洗脳。このループをキープしつづけると、どんどん時給もアップして、結構稼ぐことができた。
このバイトの経験を活かして、そのうち「教祖さま」をやってみようと思っている。
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(2)
ザ・プロさん
専門職に欠員ができてしまった時の、代打的なバイトでした。たとえば、パイロットがアルコール検査でひっかかってしまった時が私の出番。旅客機を操縦してお客様を無事に目的地までお連れする。
またある時は、総理大臣がお腹が痛くて辞任したいという信じられないことが起きて、私が駆り出されたことも。そんなときでも、きちんと総理大臣をこなすのがバイト内容でした。
印象に残っているのは、ロケット組み立てに使う部品の研磨。工場の社長さんが阿部寛似で、なんやかんや難題や困難に直面したんですけど、結局私が研磨した部品が納入されてロケットの一部として宇宙に行ったなあ。
つまり、その筋のプロの代打を行うのが業務内容で、「ザ・プロさん」と呼ばれていました。世間ではほとんど知られていない「ザ・プロさん」ですが、とてもやりがいのあったアルバイトで、いまでも当時の仲間とはよい付き合いがあります。元来器用だったので、私には合っていたバイトだったと思います。
2、
僕は、人生で数回だけアルバイトをしたことがある。
最初は、噺家になることを決意して東京に出てくる際の資金集めとして。その後の数回は、都内に出てきてからである。
前座時代というものは、今時の苦学生よりもずっとお金のない生活を強いられる。ある程度の貯金をしてから出てきたは良いものの、一人暮らしはやはり何かと入り用だった。だから、少しでも生活を楽にするためと、割のいいアルバイトを探したのがきっかけだった。
知人のツテからお声がかかったのは、結婚式の代理出席、という変わったバイトだった。
「人羅君、僕と背恰好が大体一緒やな」
依頼主の望月さんはそう言ってレンズの厚そうな眼鏡越しに僕を眺めた。僕は、この、背恰好だけは似ているが、顔は似ても似つかない望月さんに成りきれる自信が無かった。しかし、どうしても外せない仕事があるが、どうしても義理としてでなければいけない結婚式だと言われれば断れなかった。
「バレへんバレへん。とりあえず眼鏡だけかけてってな?」
その望月さんのアドバイス通り、なるべく望月さんがかけていた眼鏡に似たものを購入し普段は全く着ないスーツを着込み指定された結婚式場へ。
驚くことに、これが全くバレないのである。もっともらしい顔で新郎を祝福すれば、新郎は「遠いところありがとう」と僕の肩を叩いた。同じテーブルに座る仲間らしき人たちも「見ないうちに貫録出たヤん?」なんて冗談を言ってきたりした。僕は内心、緊張しっぱなしであった。望月さんが元々関西人なのは良かったが、細かいことを言えば望月さんはどうやら大阪の人らしい。ハッキリ言って大阪弁と京都弁は全く違う。時々素が出てしないように考えながら話すのは、ある意味、高座に近い緊張感があった。
結局、最後などは見も知らない新郎に熱い握手をされ、更に見も知らない新郎のご両親にまで「そちらのご両親もいつまでもお元気で」なんて声までかけられて終わった。どうやら望月さんのアイデンティティはその特徴的な眼鏡と、長身、それから関西弁ぐらいらしかった。
たった3時間強の出来事だったが、僕は大変疲れた。もちろん、二次会も誘われたが丁重にお断りし、その日のうちに望月さんに連絡した。
「二次会出てくれたらもう1万はろうたんに」
本気なのか冗談なのかそんなことを言った望月さんは、バイト代として僕に1万と投げ銭を少しだけ払ってくれた。3時間でそれだけ貰えればボロ儲けとも思えなくもないが、出来ればもう二度とやりたくないと思った。
しかし残念ながら望月さんとのご縁はそこでは終わらなかったのである。
僕が、自分自身でもそんなアルバイトをやったことさえ忘れかけた頃。知らない番号から電話がかかってきた。不審な電話は基本的に出ない主義だ。用事があるなら留守電にメッセージを残すだろうと無視していたら、聞き覚えのある声でメッセージが入れられた。
「人羅君の番号でおうとる? 望月です。またバイト頼みたいんやけど」
嫌だと思ったが、最初に仲介してくれた知人からわざわざ番号を訊いたのだと言われてしまえば話を聞かないわけにもいかない。
「この前の結婚式でな、君の隣に座っとったデブおるやろ? あれが今度は結婚すんねんて」
確かに、あの時左隣で1.5人分くらいの幅を取っていた男がいた。大人しい印象だったが、隣に座ってしまった。しかも、周りの人間の話を聞いていたところ、どうやら彼と望月さんは結構仲が良かったらしい。しかし、それでも彼は僕を完全に望月さんだと思い込んでいた。
「今回な、出席するだけちゃうくて、受付っちゅーもんも頼まれとんねん」
もちろん出席のアルバイト1万円に受付業務のオプション料として4000円ほど付ける、と言ったうえで、望月さんは「今回もちょっと色付けたるから」なんて誘惑してきた。
それは大変、甘い囁きだった。もちろん僕は、その誘惑に負けて2回目の望月さん代理をする羽目になる。
不思議なことに、今回の受付業務付き代理出席もバレないのだ。誰一人として疑問に持たず、むしろ「久しぶり。連絡先教えろよ」などと言われて慌てふためいてしまうくらいだった。2度あることは3度ある。いや、むしろ、受付なんて目立つことをしてしまったので、それから立て続けに5回ほど代理出席をすることになった。
その中の1回は都内でなく、大阪だった。どう考えても本物の望月さんの方が会場が近い。にもかかわらず、僕が代理で出席した。その頃の僕はもうすっかり望月さんとして振舞うのが板についてしまっていて、僕が出ないわけにはいかないらしかった。もちろん、その頃は式から2次会までフルに出て、しかも、一度はスピーチなどしてしまっていた。
ある時、望月さんから電話がかかってきて、呟いた。
「もう、きみが望月でええんちゃうかな? 君は、もう、望月として生きるべきやわ」
それを最後に、僕は望月さんと会うことが出来ていない。
3、
僕は落語家になる前にいろんな経験をしておきたいし、
今日はその頃の話をしようと思う。
宅配寿司屋のバイトに受かった。僕は車の免許は持っていない。
何をするのかといえば、何でも屋である。
ワサビの作り置きを準備したり、
一番難しかったのは、
ドライバーが届けるまでラップが破けないように綺麗に張るのは意
やっとラップも破らず張れるようになってきたところで、店長に「
「
どうやら、かっぱ巻きの仕込みは早朝ではないらしい。
時間外労働じゃないかとも思ったが、
うちの裏メニューのトロたく巻きは絶品なのだ。
深夜0時、店の前で待っていた軽トラックに乗り込んだ。
「着いたぞ」
夜遅くということもあって僕はぐっすり寝てしまった。
懐中電灯をつける店長の後ろから付いていく。
店長が懐中電灯をパッパッパッパとつけたり消したりしている。
そこにぬっと現れた僕らより長身の男。スラッとしているが、
今度は店長と一緒にその人についていく。
その人はよく見ると頭のてっぺんが平面的に広がっている。
口元は立体的。もしかしなくてもかっぱだ。
さっきまでの静けさとは打って変わって騒々しい。
寿司職人らしき人達は手を挙げ、怒号が飛んでいる。
きゅうりをもって構えているかっぱ達と、
「ウエッジウッド」「ティファニー」「ノリタケ」「マイセン」「
「平皿」「小皿」「しょうゆ皿」「取り分け皿」「お盆」「
何やらブランド名と皿の種類が叫ばれている。
店長が一人の河童に近づいて話しかける。
かっぱは腕組みしながら考え込んでいる。
かっぱ達の主食とするきゅうりは自給自足で栽培できるが、
そのため、いつからか、
清流の水を使って丹精込めて栽培されたきゅうりと、
世間では河童は妖怪だなんて言われているが、
かっぱの皿は日中ずっと太陽にさらされるため老朽化が激しく、
安い皿は1day~2week、まあまあの物は1month 、高級皿は1年~2年保つ。
平皿は標準体型、しょうゆ皿は赤ちゃん用、
というように体型や年齢によって皿の種類は異なる。
そういえばさっき、「せいろ」と聞こえてきたけど、
今はよくても後々かっぱの逆鱗に触れて尻子玉を抜かれるんじゃな
ダイソーやセリアの百円均一の皿は使い捨てのため、
今回はきゅうり214本につき、
ちょっと買いたたかれているような気もするが、
うちのかっぱ巻きは水々しくて、
そんなわけで僕の好きなメニューはトロたく巻きとかっぱ巻きにな
梅雨入りした割に今年はもうすでに暑いから皿の水も乾きやすいだ
最近よくあるゲリラ豪雨に遭遇すると、僕はとても安心する。
4、
僕は学生の頃、実家の近所の個人塾でアルバイトをしていた。小学生の算数から高校生の数学までクラスを持っており、幅広い年齢層に教えていた。子どもたちの「わかった!」とひらめいた時の表情が何より好きだった。そういう瞬間にやりがいを感じていた。今でも転職するなら先生が向いていると思っている。そんな個人塾で夏休みにちょっとした事件が起こったことを書きたいと思う。もし、このコラムの読者の中に僕の元教え子がいたらちょっと恥ずかしいけど。
夏休み中、個人塾でも夏期講習を行っていた。僕は集団クラス(10人~30人)と、個別指導の両方の授業を持っていて、週4回は出勤していた。アルバイトじゃなくて、社員くらいの業務量だったと思う。8月20日にその事件は起こった。その日、夏期講習の成果を試すべく、外部で行われる模擬テストを受けた僕の生徒(中学生3人)が、ものすごい勢いで塾にいた僕に駆け寄ってきた。ちょうど昼休憩だったので、危うく食べかけのコロッケパンを落としそうになった。彼らは僕に口々にこう言った。
「先生!模擬テスト受けてきたんですけど、先生がテストに出るぞって言った問題ばかりテストに出た!超すごい!結果が楽しみ!」
過去問などを調べて授業を構成していたし、こういうことはあるだろうなと予想はしていたので、それほど驚きはしなかった。この時は。
新学期が始まり、生徒は塾ではなく学校に通うので、僕の昼のシフトはなくなり、夕方~夜のみになった。まず4時頃、小学3年生~5年生の子たちが順番に来るので、個別指導を行う。夏期講習中に脱落せず新学期まで塾通いを続ける子たちなので、みんな真面目で意欲的だ。最初に来た3年生の男の子が僕の顔を見るなり飛びついて、「せんせー!この前の算数のテスト100点だったー!」と言ってきた。夏期講習も頑張っていた子だったので、その子の実力がアップしたのだなと嬉しくなった。その子は夏期講習のクラス分けテストでは30人中28番目の成績だったから、この子の努力は相当のものだったと思う。さらに僕の教え方も相当よかったのだ。次に来たのは5年生の女の子で「今日算数の抜き打ちテストがあったんだけど、初めて満点取りました」と嬉しそうに報告してきた。それから来る生徒来る生徒みんな算数の成績が上がった!と報告してきた。これは少し異常な光景だった。1人2人なら偶然だと思う。しかし、小学生~高校生まで軒並み僕の授業を受けた生徒の算数、数学の成績が良くなっている。これが評判となり、遠方からも生徒が来るようになった。「人羅先生っていう学生さんの授業を受けると算数や数学が苦手な子でも必ず100点が取れる」という噂は京都市内外に広がった。(これはちょっと言いすぎた)とにかく僕の授業の人気は凄まじく、僕は完全に社員と化していた。アルバイトの給料以上確実にもらっていた。僕はただ自分の好きな算数の世界をみんなにも面白いと思ってもらいたくて、できるだけわかりやすく説明していただけなのに、噂は尾ひれをつけて益々広がった。
夏が終わり秋に入る頃、また事件が起こった。僕の授業を受けた生徒の国語の成績がみるみる下がりだしたのだ。理由は1つには絞れないだろう。算数や数学が楽しくなるあまり国語を勉強しなくなったのもあるだろう。高校入試を控えている中学3年生はこういう噂やジンクスに敏感だ。つまり、「人羅先生の授業を受けると数学は満点取れるけど、国語は一気に下がるぞ」などというマイナスな噂が広まったのだ。それどころが、60分まるまる人羅先生の授業を聞いたら数学100点、国語0点になるから、30分だけ聞いてあとは中抜けして国語のクラスに途中から入れば両方最低50点は取れるよ、などの変な手法を取り入れる生徒が出始めた。これは心外だった。僕が国語ができないとでも?冗談じゃない。昔から小説を読むのが好きだし、作者の心情を読み取れなどのおかしな設問だって答えるのは得意だ。これは非常事態だ。そう考えた僕は算数、数学の授業に国語的表現を取り入れることにした。問題文を小説のようにしたり、話し言葉のようにしたり、問題を作った作者の心情を考えたりなど試行錯誤をして60分で算数も国語も満点が取れるようなカリキュラムを構築した。
年が明けて受験本番シーズンになると、僕の授業を受けると国語の成績が下がるなどの風評被害は消え、また生徒が押し寄せる人気講師になった。ちょうどその頃自分の進路についても考え始めていた。このまま人気塾講師として社員になり、テレビに出たりして稼ぐのもいいけど、本当に自分がやりたいことって何だろう。先生の仕事は向いていると思うし、やりがいもあるから学校の先生もいいな。両方できる職業ってないのかな。文部科学省が定めた教科書や試験を研究して試験対策を作ってそれを生徒に教えれば、生徒たちの成績は上がるし、微力ながらも日本の未来を創る若者の育成に貢献できるだろうけど、それが生涯で成し遂げたいことかな。いや、たぶん既存の問題を研究するより、自分で問題を作る方が好きだな。などと紆余曲折しているうちに落語家になった。
僕の同時に算数も国語も勉強できるカリキュラムを体験したい方がいらっしゃいましたら、ぜひ独演会にお越し下さい。「台本問題」など実演します。
20代の頃
絵を描く事が好きだった僕は
知人の紹介で彫り師のアルバイトをする事になった。
彫り師といっても手彫りは技術と経験がものを言うので
僕は電動のタトゥーマシーンというヤツで人の身体に彫っていく。
こんな素人が!いきなり本番!
と思いきや、彫り師から自分の身体に先ずは練習をと言われた。
そんな、親から貰ったこの身体にと思っていたら、
そいつを練習台にしてコツを掴めと言う彫り師の計らいだった。
いくつかの練習で実際に彫っていくうちにコツも掴めて、
いよいよ本番!
お客が来て、どんなモチーフをどこの部分に入れたいか、
大体は肩や腕、胸元や背中が多い
モチーフは
日本人なら人気が高いのは
龍、虎、蛇
ロックミュージシャンや
薔薇、梵字、トライバルなんかも
リクエストが多い。
驚いたのは
日本人よりも
外国人のお客さんが多い事だ
確かにタトゥーといっても刺青は刺青日本人の持つ刺青の概念から
外国人客の多くは
旅行で日本へ来た観光客
刺青のリクエストはほとんどが
漢字。
愛、絆、友、恵等
漢字一文字が人気だ。
外国人からすれば
日本の文化や芸術へのりすぺくとが
あり、そんな日本の漢字のタトゥーを入る事は彼等にとって、
店にはそんな外国人客用に
漢字モチーフの図案集があり
それを見せて、客が選び彫っていく。
中には漢字モチーフ集には無い漢字や言葉を要求する客も増えて来
みなさんも街で、
オリジナリティを追求するあまり
エスカレートした結果
これまで僕が外国人の身体に彫った
可笑しな刺青は
首の後ろに家具
腕に家電
ふくらはぎに東芝
脇腹に富士山
腕の内側に芸者
手の甲に寿司
腕に天麩羅その反対側の腕に定食
胸に魔
背中に亀
腕に脱原発
腕に野晒し
手首に外国人
腰に殿様
腕に忍者
背中に芝浜
腕におーいお茶
腕の内側に覚醒剤
腕に交番
足首に遅刻
右手に右手
左手に左手
背中に鯉のぼり
首の後ろにかわいい等
肩に肩こりを彫った事もある
ひたいに肉は、さすがにできなかった。
一番忘れがたいのは
マッチョでアフロの黒人がやってきて
日本の漢字で一番クレージーでファンキーな漢字をリクエストされ
漢字で一番クレージーでファンキー?
いったい何んだろうと一瞬考えたが
考えるか思い出すかのほぼ同じタイミングでパッと出た漢字があっ
僕はグレイト、ベリーナイス等の
カタコトの英語を話しながら彫っていった。
数分して出来上がったその黒人の太い二の腕に縦書きで「
後から意味を聞かれた僕は
最高にクレージーでファンキーでイリュージョンだと伝えると
大喜びでその黒人は帰っていった。
黒人の皮膚に彫っているので、刺青の立川談志は
薄っすらと、よく見ると分かる程度だったが、
薄っすらとしてよく見えないけれど
確かにそこにある。
そもそも落語自体がそういうものかも知れない。
正に幽玄である。
ただ今も世界のどこかには
立川流家元 立川談志の刺青が入った黒人がいると思うとニヤニヤしてしまう。
みなさんも街で黒人を見かけたら
二の腕を注意して見てください。
もしかしたら!
大学生時代は、ノームコア(徹底的な普通)
どんな種類のアルバイトでもよかったんですけど、
週刊誌なんかでいろいろ、
働いてみると確かにちょっと休憩時間が短いとか勤務マニュアルが
モノを覚えるのはいい方で、お仕事マニュアルもすぐ覚えて、
ここの店舗が特別に大量の人間がいるわけでもいんですが。
ただ顔も名前も覚えられなくても、
休憩時間も和気藹々で、
サンリオのKIRIMIちゃんについて怒濤のごとに会話していた
この頃、友人たちから顔が変わったと言われ出しました。
店舗ではクツだけは自由なんです。
母親から「顔変わったかい?なんか中肉中背になったねえ」
顔が変わったのでも中肉中背になったのでもなく、
本部から口が酸っぱくと言っていいくらいうるさく注意されたのは
出勤したら全身、店の服を着るんですけど、自宅で洗って持ってくるの忘れたりしても、他の人から借りちゃダメで、
全国にチェーン店があるから、
しかし、みんな同じ身体なので可能な、
本当にみんな同じでよかった。
朝礼を横から見たら、個性が、三十三間堂の圧勝でした。
毎週日曜更新、談笑一門でのまくら投げ。今回のお題は「アルバイト」ということで、笑二からの遠投を受け取って、今週も次の師匠まで、無事にまくらを届けたい。
前座としての仕事が与えられるようになるまで3年ほど、僕はなかなかの極貧生活だった。
そんな貧乏に疲れて一度だけ実家に帰った際、安い居酒屋で出会った怪しいおっちゃんのアルバイトの誘いに乗ってしまった。
— なぁ、にいちゃん。お金ほしない?
— なんすか 儲け話ですか? めっちゃ金欲しいですよ!
酔いもあったんだろう、儲け話に目がくらんだ僕は、ネックレスと指輪が金ピカでやたらギラギラしたおっちゃんの話に引き込まれてしまった。
— あんなぁ簡単な話やねん。ダイエットの実行前、実行後の写真あるやろ。あの写真がほしいねん。10万円でどうや。
— え、写真だけで良いんすか?10万円!!!
詳しい話はこうだった。
・ダイエットを効果的に進める「検査キット」を販売している。
・まだ日本未発売なので広告を作る際の試験者の「太ってる写真」「痩せている写真」を掲載したい。
・できればその「検査キット」を試用したコメントも欲しい。
・「検査キット」は尿検査と同じなので身体に害はまったくない。
・ 「検査キット」はダイエット効果が出てるときに尿に出る「ケトン体」というものをリトマス紙的なものでチェックする簡単なものらしい。
おっちゃんはもっと難しい医療用語を連発してたと思うけれど、すでに人工香料味のレモンハイを6杯ぐらい飲んでいた僕はまったく覚えてない。
おっちゃんは名刺と紙袋に無造作に入った「検査キット」を言葉たくみに渡しつつ、キット預かり保証金として1,000円頂戴と僕からお金を受け取った。
— 3か月やる前、やった後の写真と感想、バイト代の振込先をメールしてなー。
ほなバイバイと言って、居酒屋からピューと去っていった。
「検査キット」の中身はこうだった。
・使用書
・細長い付箋のような紙(試験紙)100枚
・紙コップ(尿を入れる小さなカップ)100個
以上だ。
A4一枚のペラっとした使用書には細かいことが書いてあったが、要するに炭水化物食を極力減らしてダイエットが効果的に進めば脂肪が燃焼されている。脂肪が燃焼しているかどうかは尿を同梱のリトマス試験紙のようなものでチェックするとピンク色に変色するそうだ。それを目安に効率よくダイエットする検査キットという商品らしい。
安っぽい付箋のような試験紙と紙コップは全て使い捨てで、保証金を騙されていると気が付けばいいのだが10万円のインパクトが大きかった。また、時期的に拘束されるバイトより、落語修行に専念したかった僕はひとまずやってみることにした。
ステップ 1:
性格的にオリジナリティにこだわる僕はまずキットの使用前写真にこだわった。水を大量に飲んだ後、ライ〇ップのようにできるだけ姿勢を悪く、不幸な顔をした写真を自撮りした。
ステップ 2:
炭水化物食を極力減らしてみた。ご飯やパンを減らしたり、お酒の席ではビールをハイボールにするなど工夫をした。
ステップ 3:
検査キットで毎日チェックした。
まず1か月やってみて試験紙の色は一向にピンクにならなかったけれど、3キロやせたことに驚いた。それまでビールを沢山飲んでいたし、牛丼が主食だったのをやめたのも大きかったかもしれない。
ただ、問題が起こった。食欲はご飯やパンを沢山食べていた時と同様にあるので肉や魚を外食でも頼むようになったら食費がどんどんかさんでいった。普通の鮭の塩焼き定食に対してご飯をやめてシャケもう一つとか生姜焼き定食ごはん無し肉大盛りとか2倍の食費がかかってしまうのだ。
しばらくして、体重もそれほど減らないので思い切って、あの怪しいおっちゃんにダイエットはどうすればいいか質問をメールしてみた。心配していたけれどメールはちゃんと返答が返ってきた。
— ダイエットのこともっと勉強したらええねん。本読んだり、ジムに通ったら?
「なるほど」と思い、最近のダイエットにまつわる本を購入したり、近所のフィットネスジムにも登録した。沢山のダイエットにまつわる本があったので一番売れているという本を5冊ほど買った。またジムも一番安いものに登録したが月額7,000円かかった。
約束の3か月ほど経って、運動の効果もあり僕は結局5キロぐらいやせたがお金はたくさん出て行った。相変わらずあのリトマス試験紙のようなものはピンクにならなかった。とりあえず5キロやせる前の写真と痩せた写真をうまく加工しておっちゃんに10万円バイト代請求のメールをしてみた。
— 検査キットの感想はどうや?
メールの返答がきて、僕は考えた。
検査キットは全く役に立たなかった。自分の努力でここまで痩せれたんではないかと思った。嘘っぱちの感想を書いた広告を世の中に出していいのか。。。
なんとなく気が引けたが、おっちゃんに正直に返事をした。
— すいません、検査キットはまったく反応がなかったので感想かけません。
正直なところ自分で努力して痩せた結果やと思います。
おっちゃんからまた返事が来た。
— そうやな、健康第一やで。健康やったらまだ若いし、うんと稼げるで。
結果的に、バイト代は食費や本やジム代でマイナス10万円ぐらいになった。
でも、不摂生で激太りしていた僕の体は今すこぶる健康になった。