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『mathematics;re』について

 『how to count one to ten』の3rdEP『Method of slow motion』が発売されて20日ほど経つ。how to初の自主企画イベントは彼らは不安がっていたものの蓋を開けてみたら236人という動員で本当に素晴らしいイベントとなった。トリの出番だったhow toのライブが始まった瞬間に少し泣いてしまったもの。
 彼らの演奏がとても好きで、前作も累計2500枚とか売れているけどたまに行く彼らが出るライブは本当にぱらぱらとしかお客さんがいなくていつも歯がゆい思いをしていたから、作品作りだけでなくそれを届けるところまで意識を張り巡らせるようになってきた変化が1ファンとして嬉しい。

 11月8日のレコ初ツアーファイナルに向けて、共作の『mathematics;re』が先日、YouTubeにアップされた。これを機会に是非とも聴いて頂きたい。

(http://youtu.be/-Im1fOqEzFg)

 せっかくなので『mathematics;re』について今日は書いておこう。
 当初頂いた彼らからのオファーは『一緒にライブをやらない?』というものでした。何度か僕の落語を観にきてくれていて、しかも楽しんでくれていたみたいで、突然そういうオファーがきた。大好きなバンドだし断る理由は無いとしてどうせならただお互いがパフォーマンスするだけじゃなくて、何か一緒にできた方が楽しいね、という話になり、一緒に作品を考えることになった。
 彼らはインストバンドでほとんどボーカルがないので、こちらとしては落語だったり、僕の関西時代からの友人の本名のパフォーマンスだったりで物語性を補填することでhow toの曲をよりグッと聴ける環境作りができたらなぁと考えたのがまずは一歩目。

 最初の打ち合わせの時に実質how toのリーダーである奥原さんが持ってきてくれた企画書のようなものを読んで、how toと自分や本名くんとの共通点が見えてきた。わりと形から入る奥原さんは、その時すでに『行間。』というタイトルを用意されていた。それが後に『間、或いは行間』と変わっていくことになる。

 ここで11/8のイベントに向けて僕が書いた文章を掲載する。

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『間、或いは行間』によせて –立川吉笑–

 『間、或いは行間』とは、ポストロックバンド『How to count one to ten』が2014年10月8日に発売する3rdEP『Method of slow motion』の発売記念ツアー・ファイナルのイベント名である。
 イベント名も然ることながら、ポストロックバンドが主催するイベントに『落語家』である立川吉笑と、『興幻◎し <きょうげんまわし> 』という全く意味の分からない肩書きを持つ本名竜也とがゲストで出演することは殊更おかしく感じるかもしれないけれど、我々3組にはジャンルこそ違えど芯の部分でのある共通項がある。それが『間 <ま> 』だ。

 落語家である自分が『 間 』に意識を向けることは必然的なことだと言える。1人で何役も演じ分けながらほとんど言葉だけでもって自分が思い描く情景を聴き手に伝えるためには『 間 』の使い方がとても重要になってくるからだ。落語家は常々『どのように喋るか』についてと同じくらい、『どのように喋らないか』について考えている。

 本名竜也が『興幻』と名付けた彼独特の表現方法は言ってしまえばオーディオドラマのようなものだ。彼もまた落語家と同じく1人で何役も演じ分けるのだが、落語と違う点は色々な機材を使用する点と、所作を全く利用しない点である。聴衆の想像力にすべてを委ねようと、「目を閉じながら観て欲しい」とまで言い放つ彼の『興幻』は落語以上に『 間 』について敏感なのは間違いない。

 それではHow to count one to tenの『 間 』はどこにあるのか。
 一度観れば分かるけど、彼らのライブには独特の緊張感がある。3本のギターとベースとがまるでドラムと向き合う様なポジションで繰り広げられる演奏は、客である我々がいる「外側に向けて」でなく、「内側に向けて」繰り広げられているような気さえする。内側に向けられた演奏を、観客が外側から見守っているような気持ちにさせるのが今の彼らのスタイルだ。
 そういったスタイルをとる理由は彼らのプロフィールに書いてあった。演奏を引っ張っていくリードパートがおらず、全パートが脇役としてひとつの主題となるメロディを作り出すためには相互間の同期率が重要になってくる。それこそ1小節の中の1拍、さらには0.5拍、さらには0.25拍と、究極的には無限小の世界まで同期の精度を高めることを目指して彼らは内向きで演奏をしているのだ。
 1拍の中には2つの0.5拍が潜み、0.5拍の中にはさらに2つの0.25拍が潜んでいる。5人でもって「せーの!」と些細な1小節に飛び込みそこに溢れる膨大な拍数、その『 間 』を捉えることが、彼らのMethod of slow motionなのかもしれない。

 『間、或いは行間』ではそんな三者三様の『 間 』の捉え方を体感して頂けるだろう。』

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 最初の打ち合わせ時にすでに『行間』という言葉があり、そこに書かれていたhow toの「一小節に潜り込んで行くスタイル」という考え方を知った時、ちょうど当時僕はゲーテルの不完全性定理について関心があって無限について考えることが少なくなったのですぐに無限大・無限小のことや、無限の濃度のことなんかを連想した。
 そこから彼らのアルバムのタイトルである『Method of slow motion』や僕のネタである『ぞおん』何かに繋がっていくのだけど、とにかく最初の打ち合わせで一気に色々なことが動き出した。

 吉笑年鑑2012にも書いているけど、元々ポエトリーリーディングのような形式に興味があり、というかそれこそが現代落語だと思っていて、憧れもあるし恐怖を感じてもいた僕なので、そう遠くない将来音楽の領域とは何かしら接点が生まれるだろうなぁと思っていた。江戸時代、一番始めに落語を拵えた人が現代にいたらたぶんサンプラー使って、ルーパー使って、仕込んだトラックも使いながら伝えたいことを伝えたんじゃないかなぁと確信している。

 一緒にイベントをやるとして、落語の裏で音楽が流れる理由付けをしたいと思っていて、本名くんとあれこれ考えているうちに二人ともアニメが好きなこともあり、タイムワープというか、「空間に歪みが生じた時にhow toの曲が流れる」というルールを設定したらどうかという話になった。
 全体を貫く物語世界を構築してそこに落語も含まれていて、それらをhow toの演奏が繋いでいくという形。要するに演劇的なことをやるのが良いのじゃないかということになり、実際色々と試行錯誤して大まかなストーリーを組むところまで進んでいた。
 ひとまず落語と音楽とを絡めるときに、僕らしいネタでないし、肝の部分はそもそも落語じゃなくて講釈だしということはひっかかったけどまずは『鮫講釈』だな、というのは僕の中で決まっていた。どう考えても講釈の部分はトラディショナルな日本語ラップだから音楽との親和性は高い。これは僕と本名くんとで家飲みしている時に、家元の鮫講釈とDragonAshのFantasistaをマッシュアップしたらめちゃくちゃ気持ち良くて上がった原体験がある。
 そこで考えていたのは、「近未来人の主人公があるきっかけで過去にワープしてしまう」→「未来への戻り方を模索している折に鮫講釈の舟に乗りあわせる」→「夢中に読む講釈師が時間に干渉できる力があると気付く」→「講釈師に弟子入りして時間を操る技を身につける」→「一世一代の講釈で未来に戻る」みたいなストーリー。本名くんがストーリーボードやざっくりとしたデモテープまで用意してくれて、とてもわくわくしたのだけど、明らかに壮大になりすぎていて、ちょっと軸がボケているということになり、まずは1回目だから各々のいつも通りのパフォーマンスとシンプルなコラボを、という方向で進んでいった。この時考えた世界観が音源中の『言葉が時を追い越して行く』というフレーズとか『離見の見』のような設定と繋がっていく。僕の『ぞおん』も。

 イベントの形が見えてから、鮫講釈をどう音源化しようかなぁと考えていた時、急に『how to の新しいCDに音源を入れたら面白いんじゃないか』と閃いて、すぐに電話をした。ちょうど1回目の『吉笑ゼミ。』に向けての最初の打ち合わせをスタッフとしている時だったのを覚えている。
 僕としては「ポストロックバンドの新譜に落語で参加」というのはフックになるから得しかないけど、彼ら的にはちょっと色が濃すぎるからどうかなと思ったけど奥原さんも面白がってくれて、そこから音源化していく作業が始まった。how toの曲はすでに固まっていたから、とりあえず僕はそれに合うように講釈部分を少しずつ手入れするようになった。how toのCDだから落語が目立つ必要はなく、演奏が始まったら言葉は埋もれるくらいでいいと思ったからクスグリとかは意識せずとりあえずリズムが際立ちやすいことと、曲調と合うフレーズ選びだけを考えて切ったり張ったりをした。
 音源を聴いてもらったら分かると思うけど、結構演奏と講釈があっているのだけど、あれは別にクリックに合わせて演じたわけじゃなくて、事前に微調整してあとは一発録音して重ねてみたらあれくらい合うのだった。途中、演奏が上に抜ける感じの部分があって、色々練習している時たまたまそこに『合点なりと葦毛の駒に、、、』の部分が重なったら気持ち良かったのでそこに合うように前のフレーズ尺を調整したのと『ドッと上がった歓声に、、』の近くに演奏でも決めの部分があったからそこを合わせるようにしたのと、講釈にズームするところはリズミカルな方がいいからと4つ打ちに合わせて読める、普段は鮫講釈に入っていない『三千一組二千一組、、』の部分を三方ケ原から引っ張ってきたりというのが主な工夫。曲が終わってからだらだら落語が続くのは気持ちよくないから鮫のクダリもカットした。
 本当だったら家元やそれこそ講釈師の方の音でやった方がもっとグッとくるのだろうけど、これをやろうと思って、それを面白いと思えて、グッとくるように微調整できるのは自分が適任だろう、と思うことで、自分である意味を見出すことができた。

 素材が揃ってから、それを音源に昇華させるのは本名くんの仕事で、この作業は本当にきつかった。1日1回、本名くんからデモが送られてきて、それに奥原さんと僕とがダメ出しをして、それを踏まえたデモをまた翌日送られてきてダメ出しをして、の繰り返し。心の声の音圧、内容、SEの入れ方などなど本当に色々なパターンを試し尽くした。途中本名くんが訳分からなくなって、「シンプルな方がいい」と心の声をほとんど削除して送ってきた時は大変だなと思った。二週間くらいひたすら足しては引いて、引いては足して、を繰り返して、ようやく出来上がったのが今の形。ミュージシャンの人の話でよく聴くけど、音源を聴き過ぎてそれが良いか悪いか全く分からない状態、になったのは初めてだった。
 結果、嬉しい感想を頂くことが多いのであの作業は間違っていなかったのだろう。

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 そんなことを経て仕上げた音源を11/8にたぶん1度限りとなるでしょうが、実際に生でパフォーマンスをします。東京・大阪・名古屋を回ってきたツアーファイナルのhow toは2セットのライブをしてくれます。新アルバム中心の構成と、それ以外の音源からの構成と。
 本名くんのパフォーマンスはたぶんこれまで観たことの無いものだと思います。
 僕は僕で、たぶん音楽のお客さんが多い中でいつも通りの1席をやります。
 そして3組での生『mathematics;re』

 楽しい一夜になると思いますので是非いらしてみてください。
 手売り券をあと20枚ほど持っていて、これを買ってくださった方には当日、how toの演奏だけというインストバージョンの『mathematics;re』CDが付いてきます。(この日限りの特典)。
 手売りのお客さまを優先しますが、僕への直接予約も受付ます。余った手売り券を予約の方に当日回しますのでご興味ある方は『名前・枚数・連絡先(電話番号)』を書いてtatekawakisshou@gmail.comまでメールしてください。

 どんなことになるのか僕もわくわくしています。何より、how toのライブ、本当にカッコいいので是非!

(http://youtu.be/BfcZ2ZZ1DNg)

「間、或いは行間」

2014/11/8(土) 六本木 SuperDeluxe

OPEN/18:30
START/19:30

前売り2,500円 / 当日3000円(共にDrink別)

How to count one to ten
本名竜也
立川吉笑

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※各演者による手売りチケットがあります。
※手売りチケットをご購入された方には『mathematics;re』のインストバージョンCDが特典でつきます!」

詳しくはこちらをごらんください。

http://howtocount1to10.com