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吉笑ゼミ。

 このブログで『スクラップ企画』と冠してずっと準備をしてきた『吉笑ゼミ。』、無事に第1回を終えることができました。ご来場頂いたお客様ありがとうございます!!100人近いお客様に集まって頂けたのも励みになりますし、何より皆様から頂いたアンケートに込められた熱量に触れ、このイベントを企画してよかったと今、本当に思っています。

 落語家になる前からヨーロッパ企画さんの流れで知り合ったSCRAPの松田くんと「何か一緒にしましょう」という所から始まったこの企画。去年知り合った森田真生さんの『この日の学校』というイベントに遊びに行って、その自由な内容に衝撃を受けました。立川流の本質は前代未聞メイカーであることだと思っている自分だから、非力なりにもそういう動き方をしているつもりだったのですが、落語会というイメージに知らず知らずのうちに引っ張られていて定式的なイベントしかできていないことに愕然としました。もっと自由に作っていいんだとハッとさせられました。

 「ゼミ。」のパッケージにしようと思ったのは森田さんや、森田さんの友人の物理学者の江本さんや、次回のゲスト講師の下西さんと一緒に食事をしたことがきっかけでした。研究とか学者とかと聞くととても難しそうなイメージでとっつきにくい気がするけど、同年代の彼らが魅力的なこともさることながら、一方でちゃんと”同年代の男”なのでした。下ネタも喋るし、恋愛の話もするし。彼らの研究者や研究者志望である一面と同じように普通の若い兄ちゃんという一面も伝えられたら楽しいだろうなぁと思って企画をしました。

 枠組を決めて松田くんに話すと「面白いですね!」と言ってくれ、当初は別の会場でイベントをやろうと考えていたのが、この企画なら、ということでヒミツキチオブスクラップを紹介してくれました。リアル脱出ゲームのような体感型のイベントに参加するお客さんと、「ゼミ。」に関心を持つお客さんは親和性が高いのじゃないかと。

 さて、1回目のゲストは誰にしようか、と考えてすぐに二人の名前が浮かびました。まずは森田真生さん。この方と出会ったことが全ての始まりなので、早速打診したのですが、スケジュールが合わず、またいずれ、という話になりました。そしてもう1人が今回のゲストに出てくださった倉本美津留さんでした。
 大学院などに『ゲスト講師募集!』という張り紙をして講師を集めようと考えている『吉笑ゼミ。』なので、イベントの形的にも倉本さんは少しずれてしまうし「一回目の賑やかしとして有名な倉本美津留の力に頼るなんてダサいなぁ」などと思われてしまうデメリットももちろん考えたのですが、以前書いたように、僕にとって倉本さんは師匠談笑と並んで、いまの自分が存在できているのはこの方のおかげだ、と心から思える存在で、というか実際にそうなので、僕の新機軸となるイベントの第1回目にその倉本さんを呼ぶのはイベントの枠からは外れても立川吉笑にとってはありだと思ったのでお声がけしました。また僕もめちゃくちゃ影響を受けている”新しいモノ”にこだわる倉本さんは1回目以外だと出てくださらないと容易に想像できたし、逆に言うと1回目だったら絶対に出てくださるとも思っていました。

 ブログで書いたような関係性だったり、ましてや昨日のアフタートークで話した、僕の昔のことだったりがあって、倉本さんと同じ舞台に上がるというのは僕にとっては本当に大きな一歩なのでした。(失踪の件まで話されるとは思っていませんでしたが笑)これまで別々だった、落語家になる前の人羅真樹と落語家になった後の立川吉笑を、繋ぐ事ができるのは倉本さんで、というか、倉本さんと同じ舞台に立つということはその2つの自分を繋がないといけないということでもありました。

 そんな中、制作業務をやってくれてる松田くんが、ゼミについて各所と連絡をするときにノリ半分、本気半分で『立川吉笑GROUP』という所属でやってくれているのを知って、なら、こっちも惜しみなく出していこうと思って、音楽をhow to count one to tenの奥原さんにお願いしました。「チャイムをモチーフに作曲してください」とだけ依頼して仕上がってきた曲に、細かい修正をたくさんお願いして出来上がったのが昨日の出囃子です。アンケートに書いてくださっている方もおられましたが、あの音楽のおかげで一気に世界観を構築することができたと思っています。奥原さん、ありがとう。

 拍手に埋もれてあんまり聞こえなかったかもしれませんが、一席目が終わったあとの転換BGMは阿佐ヶ谷に住んでる同い年の友達が作ってくれました。彼も立川吉笑GROUPの一員です。砂切りにリズムトラックが同期していく感じの曲、これは二ツ目昇進記念説明会の時にやったシステムでもあります。その他、開場時や休憩時のBGMとしてhow toの曲を色々繋いで、修正してくれたりもしました。

 チラシは松田くんと知り合いの竹野匠さんが作ってくださいました。DJみそしるとMCごはんさんのCDなんかを作られた方だそうです。スゲー。これもアンケートにありますが『吉笑ゼミ。』のロゴもかわいく作ってくださいました。チラシに関してはギリギリのスケジュールだったのに初稿をボツにして再度作ってもらったりしました。「アカデミックな感じでお願いします」という無茶ぶりで上がってきた竹野さんのアカデミックな感じが、謎の瓶だったり、そんな物質あるか?というよう謎の化学式だったりしたのには笑ってしまいました。竹野さん、ありがとうございます。

 下見に行った段階で100枚近いバインダーがヒミツキチオブスクラップにあると知った時には「さすが!」と思いました。だったらということで、アンケートとは別に『NOTE』という形をとることにしました。早速集まったNOTEは見るのがただただ楽しくてほくほくしました。後日、いくつかをWEBにアップしますね。倉本さんにも画像をお送りしました。
 当日もバタバタするなか、照明だったり受付まわりだったり、ほぼ毎日リアル脱出ゲームを運営されてるだけあってスムーズな対応をして頂き、本当に助かりました。21時30分には終わる予定だったのに蓋を開けてみれば平日にも関わらず22時までやってしまいお客様にはご迷惑をおかけしてしまいました。それ以上にそこから撤収作業に入られた会場のスタッフさんには本当に申し訳ない気持ちで一杯です。青木さんはじめヒミツキチオブスクラップのみなさん、ありがとうございます。

 
 具体的な内容は当日遊びに来てくださった皆様との秘密ですが、少しトークで言ったように当初は2席目、全然違う噺を想定していました。佐治晴臣という木工彫刻の名人、の息子が主人公の噺。
 倉本さんの講義は絶対笑いの要素が入ってくると思っていたので、だとしたら笑いの要素を、笑いの要素として落語にするのでなく、笑いの要素を人情噺というか、物語にしてみようと。抜け雀や浜野矩随のような噺を下敷きに途中で倉本さんの講義を入れ込もうと。その物語のエッセンスとして、倉本さんのある曲をフックにしようと思っていて、だからこそ以前1度だけ演った『茜色の夕日』というネタのと同じく、エンドロールのように倉本さんの曲を長そうと想定していたのですが、蓋を開けてみたら、倉本さんの講義が思ってた以上に笑い的なものだったので、これは混ざらないと途中で思い、一気に大喜利形式の形にしました。「親切」は倉本さんの本にあったアイデアです。「儚い」も。「ホンジュラス」と「隠せ財」「顔に泥を塗る」のくだりは僕がその場で考えました。

 あそこまでトークで踏み込むことになるとは思っていませんでしたが、おかげさまで落語家になる前の自分と落語家になってからの自分を繋げることができたと思っています。いま思えば、2席目の終わりで流そうと思っていた曲を、アフタートーク終わりで流せば良かったのでした。