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熊本#4

 朝6時に起きて、さっそく内風呂へ浸かる。この日も雲一つ無い良い天気で、ぽかぽか陽気だったから露天風呂も満喫した。こんなのが家にあったらいいならと不毛な事を考えたりしつつ。駆け足で食べざるを得なかった夜ご飯の分を取り返すべく、朝ご飯はゆっくり、丹念に頂いた。おいしかったなぁ〜。おひつ1つを空にしてしまった。
 部屋に戻ってちょっとゴロゴロして、今度は大浴場に行った。朝ご飯の時に見た感じだとこの日はどうやら3組だけが宿泊していたよだから当然貸切状態に。もう1度部屋のお風呂にも入って、チェックアウト。一木一草、良いとこだった。

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 タクシーで山鹿市内へ戻って、そのままバスで熊本市内へ。それにしても天気が良い。
 交通センターについて、荷物をロッカーに入れて飛行機の時間まで市内観光をすることに。
 初日は雨だったから晴れてる熊本市内は初めて。やっぱり京都に似ている。
 この日は地図でまだ行っていなかった坂口さんの家のある新町方面を散策することに。交通センターのあたりはずいぶん歩いたからもう土地勘があるからスムーズに熊本城のお堀沿いに入ることができた。右手に熊本城を眺めながら細いお堀沿いの裏道を歩く。猫の大群と出会った。途中でお堀沿いには進めなくなったから左に曲がってちょっと太めの道に出た。道なりに歩いていくと地図に出てくる『長崎次郎書店』を発見した。思っていたよりも歴史ある趣きだった。ということはと脇を見るとそこが新町駅なのだった。『文林堂』もあった。そしてちょっと歩くと日記に度々でてくる『むろや』があった。玩具問屋さん。中に恐る恐る入る。パッと見はちょっと古い玩具屋さんなのだけど、日記で読んでいた通り、店の奥に進むと怪しい空間が広がっていた、というか倉庫なのだけど、真ん中に立派な井戸があった。おぉーと思いながら店をでる。たぶんこれが坂口さんの家だろうなあと思う建物を右手に見つつ坪井川と交わるところへ。歌のタイトルにもなっている『明八橋』もなるほど、気持ちの良い場所だった。思いがけず『ソウルキッチン』という、地図には乗ってないけど日記で出てきた記憶のある店を発見したりしつつ、お昼時だったので『魚よし』へ行くことに。初日、早川倉庫を見つけたあとに少しあたりを探したけど見あたらなかった魚よしは、普通に通り沿いにあった。

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 営業中ということで中に入るとカウンターがほぼ埋まっていた。人気店なのか?1500円のランチセットを食べる。うん、うまい!大将と少しお話をしたあと、坂口さんが急遽連絡を取ってくださり中を見学できるようになった『早川倉庫』へ。初日は門が閉まっていて分からなかったけど、天気の良いこの日に改めてみると、入り口が広くて、とても気持ちの良い空間だった。奥におじさんがいらしたから恐る恐る近づいて『立川吉笑と申します』と自己紹介する。すると、横にあった事務所のようなところから若いオシャレなお兄さんが出てこられた。坂口さんが言付けしておいてくださったユウゾウさんだ。平日の昼に、急に訪れたにも関わらず、そこからユウゾウさんに色々と案内して頂いた。壁について、とか、熊本の歴史についてとか、本当に観光ガイドのような感じで丁寧に案内して頂く。話しぶりを少し聞くだけで面白い人だと分かった。倉庫の中に入る。おぉー異質な空間だー。ここでライブとか演劇とか展示とかやるのはとても豊かなことだ。倉庫の2階へ案内してもらう。うん、気持ちの良い場所だ。柱のエピソードなど教えてもらいながら、坂口さんが幻年時代の執筆に使っておられた秘密の書斎にも案内してもらった。2階のスペースからさらに奥へ奥へ入っていった、一番奥に書斎はあった。ユウゾウさんの話しぶりでも分かったけれど、なによりもおじさんが坂口さんのことが好きみたいだ。抜き打ち?で入った書斎には坂口さんのこれまで著作群がディスプレイされていた。日記で読んだ、幻年時代を書き終えて3人で泣いた、という舞台。気持ち良い場所だった。その書斎へ行く道中にも大きな部屋がいくつもあって、荷物が山積みになっていたりするのだけど所々にディーゼルがあったり、ギターがあったりして、わぁー、楽しそうな暮らしをされているなぁと思った。
 一通り案内して頂いた後には、コーヒーまでごちそうになった。毎月マルシェを開催しているというエントランス部分は調度品とか植物も気持ち良くて、どこかに似ているなぁと思ったら原宿のiki-baなのだった。

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 あそこのスタッフさんも大らかで気持ちよいんだよなぁ。すっかりくつろがせて頂いた。お礼を言って、早川倉庫を後にする。ここで落語会やれたら良いなぁー。
 早川倉庫を後にして初日は雨が降っていて断念した白川沿いを歩く。アオちゃんが首飾りを作った場所なのかなぁ、至る所にシロツメグサが群生していた。気持ち良いなぁ、とテクテク歩きつつ、そうだ『PAVAO』を行こうとシャワー通りからアーケード街を通って並木坂の方へ。このあたりは本当にもう自在に歩けるようになった。ちょうど開店時間だったのだけど、どうやら今日はお休みのようだったのでもう一度アーケードの方に戻る。空港へ向かう時間も近づいてきていたからもう一回九曜杏でお茶でもして帰ろうかなぁと思ったけど、あまりにも観光らしいことをしていないと気づいたから、熊本城内へ行くことにした。一番上まで登った。にしても大きなお城だったなぁ。
 これでしっかり観光もできたと満足して空港行きのバスへ乗る。思っていたより時間がかかってしまい飛行機の時間に間に合うかどうか、という瀬戸際まで追いつめられたけど何とか間に合って、飛行機ではちょうど志の輔師匠の落語が放送されていたので聞きながら帰った。良い天気で日焼けしちゃったのだろう、首元がピリピリしつつ。
 羽田に着いて、ちょうど発車時刻だったリムジンバスで中野まで出て、そこから歩いて帰った。

 かくして、ほぼほぼ普段の暮らしと変わらないひたすら街を歩くだけのヘンテコな旅は幕を閉じたのだった。
 熊本に着いた瞬間から薄々気づいていたのだけど、熊本の街は京都に似ていて、そしてそれはあまりにも普通の街なのだった。坂口さんのブログや書籍で描かれる熊本の街並みは驚きに満ちていて、そこがこことは違う、何か特別な場所なんじゃないかと錯覚させられるような、そんな気がしていたけど、なんてことはない、ただ普通の街がそこにはあった。

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 地図に書かれた色々な建物は、そのどれもが思っていたよりも近くにあった。ひょっとすると、それらは特別な、凄いモノなのじゃないかと思わされてしまうけれど、そうじゃない。僕たちの普段と変わらない暮らしを坂口さんもされていて、たまたま家の近くにある玩具屋、橋、娘の通う幼稚園の近くにあるうどん屋、好きな喫茶店に行く途中にある文房具屋・饅頭屋、地に足着いて暮らす中で見つけた色々を書かれていただけなのだった。躁鬱という協力なフィルターがそれを可能にしていると言えなくもないけど、それでも僕らが生きている、油断したらつまらないと思えてしまうこんな毎日も、見方を返ればそれは今すぐにでも冒険の舞台になるような気がした。