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『寺子屋ミシマ社』について

 3月17日、京都にある元・立誠小学校で開催される『寺子屋ミシマ社』というイベントに出演させて頂くことになった。

 僕がミシマ社を知ったのは、確か独立研究者・森田真生さんきっかけだったと思う。森田さんと出会うことになった僕にとってのドラマチックなあれこれは多分このブログのどこかにも書いていると思うけど、ある夏、偶然森田さんを知って、すぐさま熱量を込めたメールをお送りし、その直後に開催された森田さんが出演されるイベントに足を運んだ。
 『この日の学校』と題されたイベントが開催されたのは新潟県は佐渡島で、普段は旅行をあまりしない僕だけどこういった時のフットワークはできるだけ軽くありたいと思っているから、考えることなくすぐにチケットをとって現地へ向かった。
 佐渡島でのイベントは、一泊二日に及んだ。森田さんの講座だけでなく、古武術や韓氏意拳のレクチャーや懇親会など盛りだくさんの内容で、気がつけば落語会やお笑いライブ、せいぜい劇場で開催される演劇くらいが自分にとってのイベントの一番大きな枠組みだと思い込んでいたのに、『この日の学校』はそれ以上にもっと自由な、もっと広大な体験を担保するイベントで、「あぁ、イベントってもっと好きなようにできるものだったんだ」と改めて思い至った。その経験から企画したのが『吉笑ゼミ。』だったりする。イベントは僕が思っているよりもっともっと自由でいい。

 佐渡島で帰りの車を待っている間、森田さんと雑談をしていた。当時、作っていた『粗粗茶』というネタの骨格をお話したところ、それを「二重否定が肯定にならない場合の話ですね」と即座に分解され、そこから具体的に数学的に二重否定が肯定にならないケースをいくつか提示してくださった。
 その後、今度は東京で森田さんとその友達2人と飲む機会があった。ころころ変わる話題の中で、それぞれがそれぞれの言語で考えていることを話しあっていく、これを議論と呼ぶのかな、と思うような楽しい会話に参加しながら、こういう経験を学生時代に体験したかったなと思ったのだった。このブログでも書いていたと思うけど、当時の僕は思うことがあって大学に行こうか悩んでいた。それは落語家を辞めるとか、辞めたあとのことを考えて、みたいな意味合いではなくて、自分がやりたい落語や、その活動にとってプラスになる気がしたからで、具体的にいくつか行きたい学科なんかをピックアップすらしていたのだけど、結果的にはこの夜を境に大学に行かなくていいやと思えた。大学に行かなくても、こういう人たちと知り合っていけば、僕にとっては十分大学にいく以上の経験ができると思えたから。しばらくして、この夜一緒に酒を飲んだ下西さんと江本さんはどちらもゼミに出演して頂いた。

 それから数ヶ月が経ったころ、京都に帰ることになったから森田さんとお茶でも出来たらと連絡をしてみたところ、それじゃあと連れていってくださったのがミシマ社・三島さんの自宅だった。京都への新幹線の中で三島さんの著書『計画と無計画のあいだ』を読んで、一瞬でこの人のことが好きになった。出版という強固な枠組みを少しずつ拡張していこうというその姿勢を勝手に、自分と重ね合わせた。北大路で森田さんと待ち合わせて、自転車で三島さんのお宅へいった。お茶を頂きながら色々と話して帰っただけなのだけど、この辺りから『地方』という僕にとっての新たな指針が芽生え始めた。
 それが去年のゼンコクツアーに繋がって、結果、熊本は僕にとって欠かせない場所になったし、鹿児島で出会った杉本酒造さんやプチシネマ界隈のみなさんや、徳島の山あいにあるヘンテコな神山町や、尾道、金沢と、それまで全く接点がなかったし、この機会が無ければ今後も出会うことのなかったであろう町や人と出会うことができた。落語家が掲げるテーマじゃないけど、『地方』と『教育』は今後も僕の指針の大きな部分を占めることになりそうで、それらを気持ちよく繋げるものこそが「吉笑ゼミ。」じゃないかと思っていたりする。

 長々と書いてきたけど、それ以前の僕と、以降の僕とでは全く考えていることが変わってしまったくらい大きな影響を受けたのが森田さんや三島さんの動き方で、だからこそ『みんなのミシマガジン×森田真生 0号』で原稿を寄稿できたことなんかも、自分にとってはとても嬉しいことだったりする。

 そんな中、今回『寺子屋ミシマ社』という企画で初めてミシマ社さんと一緒にイベントをやらせて頂くことになった。1月だっけか京都に帰った際に、ちょっと時間があったのでミシマ社さんに遊びにいって色々とお話をさせて頂いた。その延長で今回の企画をご提案頂いた。

http://www.mishimaga.com/hon-kobore/066.html

 アウトプットの方法は色々なことの兼ね合いもあるから分からないけど、とにかくミシマ社さんと自分とが一緒に何かを作ったり立ち上げたりする場合、どんなことができるのだろうか、と言う企画会議をお見せするイベントとのことで、僕自身とてもワクワクしている。お話を頂いて以来、ぼんやりと頭の中で考えていて、すでに自分としてやりたいことの骨格は見えてきているから、当日はまずそれを提案したいと考えている。その上で三島さんの考えを聞いて、そこから一緒に色々なことを探っていくような時間になるのだろうと思う。
 出来上がったものを共有して頂いたり楽しんでもらうことには、何事にも変えられない喜びを感じるけど、その上で作品が出来上がっていくまでの過程を含めて楽しんで頂けたなら、それに勝ることはないと思う。

 このミシマ社さんとの企画は、たぶん今後の自分の動き方を左右しかねない、自分にとってはとても大きな作品の一つになると思うから、是非とも、その最初の第一歩を共有して頂ければと思います。
 皆様のご来場をお待ちしております!

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〜寺子屋ミシマ社 落語家・立川吉笑さん編~

・日 時:2016年3月17日(木) 19時00分~(開場18:30)

・場 所:元・立誠小学校

・参加費:1500円+1ドリンク(ミシマガサポーターの方は1000円)

【お申し込み方法】
メール:event@mishimasha.com まで件名を「寺子屋ミシマ社0317」とし、「お名前・ご連絡先」を明記のうえお申し込みください。

http://www.mishimasha.com/jimichi/blog/index.php?e=420&PHPSESSID=a2063c8af2f7dc38a4237f801cdb3a5b