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2015年3月15日

 渋谷らくご。菊志ん師匠・A太郎兄さん・僕・圓太郎師匠という番組。  圓太郎師匠と楽屋で色々なお話をさせて頂いている中で『あまりマクラを振らずにビシッと落語に入る方が好きだ』という話題になった。渋谷らくごは持ち時間が30分あるから、ただでさえネタ時間の短い新作を中心にやっている僕はいつもマクラの時間が結構長いこともあって、後ろめたい気持ちもありつつ『そうですね〜』とリアクションしていたら、『じゃあ、今日はそんな感じでよろしく頼むよ』と正面から師匠に言われてしまい、途端、一気に高座構成を考え直すことになった。シャレの空気なのだけど、もしかしたら本気でそうおっしゃってるという可能性も消しきれなくて、どっちなんだろうと思いつつ慌てて自分のネタ帳から候補を探っていると、『言われてすぐに自分の思いを曲げるような奴はイヤだね』という追撃のシャレがきて、でも本当にシャレなのか、本気なのかが読めなくて、『いや違うんですよ〜』みたいな板挟みリアクションをしているうちに出番になった。  出囃子が流れるなか、いつも渋谷らくごでやってる道案内マクラをやってすぐに久しぶりに『ふすま屋〜道灌』という流れに入ろうと思って高座に上がり、道案内マクラに入って2分くらい経った時に客席後方にある2つのスポットライトが点滅した。  結果、後から聞いたら、ただスタッフさんが間違えて消してしまったとのことだったのだけど、楽屋でそういう話をしていたところだったから僕はてっきり圓太郎師匠の『長いぞ〜』というツッコミなのだと思って、シャレだと分かっていたら『いや、楽屋で実はこんなことがあって、、、』みたいな感じでネタに変えられたのだけど、たぶんシャレだけど本気の可能性も拭い切れていない僕は道案内マクラを変な感じで止めて、ネタに入ることになった。  次の瞬間、『ふすま〜売り!ふすま〜売り!』という『ふすま屋』というネタの入りじゃなくて、道灌の『どうも、いますか!』と落語に入ってしまった自分に気付いて『わっ!』と思った。そこから無理矢理ふすま売りに移ろうかとも思ったけど、照明点滅事件ですでにドキドキしている自分はどうすることもできずに、そのまま道灌で進めた。  となると、あと17分くらいで終わるから10分も時間を残してしまう。これはヤバいと、途中、いつも以上に丁寧に喋ったり、切羽詰まっていると逆にテンションが上がって新しい流れがその場で浮かんでそれを足したりしていううちにいつもより3分伸びたけど、結局23分で終わったから7分も残してしまった。  袖で圓太郎師匠に『時間を残してしまい申し訳ございません』と言うと、『まさかそんな反撃をくらうとは思わなかったよ』とおっしゃりながら高座に上がられた。『どっちかなぁ。。』と思って袖から師匠の高座を聞いていると、いきなり楽屋でのやりとりをおっしゃってくださって、その上色々といじってくださり、状況を全部回収してくださったから完全に救われた。しかも『そういうことを言っておいて自分が一番ベラベラ喋ってる』という落とし所まで付けて。  あまりそういう楽屋でのエピソードが少ない僕だから、とてもありがたいなぁと思いつつ、それでも若干本気じゃないか、とビクビクしながら帰るという、こんな体験ができるのも渋谷らくごくらいだなぁ。